生活習慣病と健診 |
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| 人生で心身の健康が全ての基本であることは言うまでもありませんが、それでは元気で長生きするためにはどのようにしたら良いのでしょうか。 はじめに歴史的なお話をしましょう。 昭和25年ころの三大死因は脳血管疾患、結核、肺炎の順で、平均寿命は男、59.6歳、女、63.0歳でした。50年後の平成12年には悪性新生物(がん)の総死亡者に占める割合は30.4%、心疾患が16.4%、脳血管疾患、13.4%となり、平均寿命はおのおの77.6歳、84.6歳となりました。 戦前、戦後は結核、赤痢などの感染症対策が中心となり、病気そのものが対象であったといえます。昭和30年代の初めになると厚生省が「成人病」という行政用語を使い始め、対象は40―60歳の働き盛りのひとに多く見られる、脳卒中、悪性新生物、心臓病などを減少させる目的で、それらの病気の早期発見と治療のための対策が講じられました。職場検診という言葉が使われるようになったのもその頃です。その後、平成8年からはこれまでの医学的な研究の蓄積を踏まえて、真に病気を減少させるためには先手を打って日ごろの生活習慣に視点をおいた病気の予防や進行の阻止が重要である、すなはち「生活習慣病」対策という概念が使われ始めました。病気は遺伝、環境、生活習慣が主な原因と考えられ、それに挑戦する基本的戦略とも考えられます。 病気にかんして予防医学の立場から「一次予防」、「二次予防」、「三次予防」の考え方があります。 「一次予防」は若いときから日常の生活において食事や運動などの生活習慣に注意を払うことにより、国民全体からみて病気の発症をおさえ、健康を増進させ、元気で働き、そして元気な老後を迎えるというのが、「生活習慣病」の予防の目標と言えます。このため職場では年に一回の定期健康診断、すなはち健診が通常おこなわれています。検診項目には年齢上の制約はありますが、胸部写真、血液検査、検尿、心電図検査、胃透視、聴力検査、眼底検査などが組み込まれています。この結果から肺結核を中心とした呼吸器疾患、心疾患、糖尿病、動脈硬化、高脂血症、高尿酸血症、脂肪肝、肝硬変、胃や腎臓疾患など、病気の予防と早期発見を生活習慣の立場から捉え、それらの発症を防止し、あるいは進行をおさえて、5年後、10年後、さらにその先を見据えることが目的です。生活習慣のなかで重要視されているのは、食生活と運動はいろいろな病気の原因と考えられる肥満に関連し、さらに喫煙は悪性新生物に、飲酒は肝機能障害や肝硬変に関わります。これらを限られた予算のなかで効率よく、多くの人々を検査することにより予防して、進行を抑えなければなりません。その意味でも健診では事後指導が非常に大切な役割を担っているといえます。厳密に分けることはできませんが「一次予防」ではあくまでも病気を予防する考えが主体を占めています。またどちらかというと集団を対象とし、広く薄くスクリーニングするという意味合いがあります。健康にたいしては生活習慣を改善して自ら自覚して自己管理するという点で自己責任が求められる領域です。 「二次予防」隠れた病気を早期に発見して治療を開始するという、従来の成人病対策に類似するものと考えられ、「検診」という言葉が合致します。現在は人間ドックがその役割を担っていると考えられます。人間ドックは「一次予防」よりも検査項目も多く、健診よりも厳密で病気の発見を主体としますが、生活習慣病の予防も内容に含まれているのが一般的です。しかし、予算と時間の関係で、全員に実施するのが不可能なため、年齢制限や何年かおきに希望者を対象におこなわれているのが現状です。さらに、死因の第一位である「がん」にたいしては肺がん検診、大腸がん検診、乳がん検診、子宮がん検診が別個に実施されています。また、脳検診が脳動脈瘤や脳腫瘍の早期発見を目的として追加されています。検診はどちらかというと個人を対象としたところが健診と異なるところです。 「三次予防」は不幸にして病気になった場合の、治療、機能回復、機能維持を意味し、医療保険のもとで病院や診療所が役割を担っています。 以上が国民全体からみた医療の基本方針といえますが、すべてに対費用効果が考慮されていることも見逃せません。 このような状況下で個人のレベルで自分の健康をまもるにはどのようにしたら良いのでしょうか。「一次予防」の健康診断を毎年欠かさず受診して、年ごとに変化する自分の健診結果の推移を読みとることがもっとも大切です。異常値が出現した時は生活習慣に関連するものであれば、それを自己の責任で管理して改善することが求められます。たとえば体重が年ごとに増加して、中性脂肪が増加し、さらに尿糖が出現して、血圧も年齢とともに高くなってくる場合は、治療を必要としない体重が増加した時点で食事、運動など生活習慣に注意して実行すれば、ある程度は何年か後の病気の発症を予防できるものと考えられます。 身体に自信がなく、どこかに病気があるのではないかと心配なときや、もう少し詳しく身体を調べたいときには人間ドックを受診するのがよいと思われます。 万一、何らかの症状を自覚する場合や、身体に不安がある場合、健診や検診の事後指導でさらに検査が必要と報告された場合には医療機関を早期に受診すべきです。 健診はあくまでも最低限の検査項目であり、その判定結果にも限界があります。健診で問題がなかったからまったく正常で健康であると考えるのは必ずしも正しいとはいえません。症状があるのに健診や検診を待って病気を発見しようとするのは、手遅れになる可能性もあり危険です。今は自分の健康は自分の責任において自衛して、必要なことがらは自分の意志で決定する時代です。忙しい時代になり、情報も溢れています。それでも自分に適した事柄を選択して判断し、もしも、わからないことがあれば、事後指導の時、人間ドックの時、医療機関を受診したときなどに気軽に尋ねて納得することが大切です。 以上は身体を中心に考えた予防医学の考え方ですが、それと同時に心の問題、精神の問題が時代を反映するかのように増加傾向にあり、重要な課題になってきています。しかし、その対策には難問が山積みして模索しているのが現状です。真に身体の健康を達成するにはまだまだ時間がかかりそうです。 このようにして生活習慣病を予防して元気で定年まで勤務すると、その後はまだまだ働く人や趣味やボランティアで過ごす人にわかれてきます。 65歳以後の死因は現在、男性で悪性新生物、心疾患、脳血管疾患、肺炎の順です。女性では心疾患と悪性新生物が逆転しています。生活習慣に若いときからの注意を払うことにより理論的には心疾患や脳血管疾患といった動脈硬化に関連した疾患が減少し、その結果、将来は65―75歳代の悪性新生物、75歳以上の高齢者の感染症が問題となるのではないかと予想されます。人間、永遠にいきるはずがありませんし、どこかでこの世とお別れしなければなりません。それまでの間、病床にあって単に長生きするよりも、若いときから生活習慣に注意を払って、心身ともに健康で生活の質を高めた充実した時間を過ごすことができれば理想的な人生を送ったのだと言えるのではないでしょうか。 |
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Dr.Tessie |